タロット占いの歴史は、タロットカードそのものの起源と、それが占いに使われるようになった経緯を分けて考えるとわかりやすいです。以下に、その歴史を段階的に説明します。
### 1. **タロットの起源(14~15世紀)**
タロットカードの起源は、中世ヨーロッパ、特に14世紀後半のイタリアに遡ります。
最初のタロットデッキは、現代のトランプに似た「タロッキ(Tarocchi)」と呼ばれるカードゲーム用として作られました。
これが記録に明確に残る最古のタロットで、貴族たちの娯楽として広まりました。
たとえば、ヴィスコンティ家のために作られた「ヴィスコンティ・スフォルツァ・タロット」(15世紀)は、現存する最古のタロットデッキの一つとして知られています。
この時期のタロットは、大アルカナ(22枚)と小アルカナ(56枚)からなる78枚構成が基本で、現在とほぼ同じ構造を持っていました。
ただし、この時点では占いではなく、ゲーム(トリックテイキングゲームの一種)が主目的でした。
### 2. **神秘主義との結びつき(18世紀)**
タロットが占いとして使われ始めたのは、18世紀後半のフランスからと言われています。
この転換点には、オカルティズム(神秘主義)の台頭が大きく関わっています。
特に、フランスのオカルティストである**エテイヤ(Jean-Baptiste Alliette、別名Etteilla)**が1770年頃にタロットを占いに応用し、「エテイヤ・タロット」を出版したことが重要です。
彼はタロットにエジプト起源説を結びつけ(当時は根拠薄弱)、カードに象徴的な意味を付与しました。
この時期、タロットは単なるゲームから、運命や未来を読み解くツールへと変化し始めます。
さらに、1781年に**アントワーヌ・クール・ド・ジェブラン(Antoine Court de Gébelin)**が著書『原始世界(Le Monde Primitif)』で、タロットが古代エジプトの叡智を秘めたものだと主張。
これが後の神秘主義者たちに影響を与え、タロットのスピリチュアルなイメージが広まりました。
### 3. **黄金期と現代タロットの確立(19~20世紀)**
19世紀に入ると、タロットはさらに占いの道具として洗練されます。**エリファス・レヴィ(Eliphas Lévi)**が1850年代にタロットをカバラや錬金術と結びつけ、神秘学の体系に組み込んだことで、学術的かつ象徴的な解釈が深まりました。
そして、20世紀初頭に**アーサー・エドワード・ウェイト(Arthur Edward Waite)**と画家**パメラ・コールマン・スミス(Pamela Colman Smith)**が1910年に発表した「ライダー・ウェイト・タロット」が登場。
このデッキは、小アルカナにも詳細な絵柄を加え、視覚的・直感的な解釈を容易にしたことで、現在最も広く使われるタロットの標準となりました。
同じ頃、**オズワルド・ワース(Oswald Wirth)**や**アレイスター・クロウリー(Aleister Crowley)**(トート・タロットの作者)など、オカルト研究家たちが独自のタロット理論を展開し、多様な解釈が生まれました。
### 4. **現代のタロット占い(20世紀後半~現在)**
20世紀後半以降、タロットはニューエイジ運動やスピリチュアル文化の広がりとともに、一般の人々にも浸透しました。
1960年代のヒッピー文化や、1980年代以降の自己啓発ブームが後押しし、タロットは占い師だけでなく個人でも使われるツールに。
特にインターネットの普及後、オンラインでのタロット占いやアプリが登場し、手軽に体験できるようになりました。
現代では、タロットは占いだけでなく、心理療法や自己探求の手段としても注目されています(例:ユング心理学との関連)。
### 5. **日本での歴史**
日本では、タロット占いが本格的に広まったのは20世紀後半、1970年代頃からです。
西洋文化の影響を受け、オカルトブームやスピリチュアルトレンドの中で、タロットカードが輸入・翻訳され、占い師や愛好家が増えました。
1990年代にはアニメやゲーム(例:『ペルソナ』シリーズ)でタロットが取り上げられ、サブカルチャーにも浸透。
現在では、秋葉原や原宿などの占いスポットや、オンラインサービスで気軽に体験できる文化として定着しています。
### まとめ
タロット占いの歴史は、14世紀のゲーム用カードから始まり、18世紀に占いとして変貌し、19~20世紀に神秘学や芸術と結びついて現代の形に進化しました。
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